クモ膜下出血

まず、破裂した脳動脈瘤に関してですが、通常は破裂後に止血が得られて病院に来院されていることが多いです。出血が継続してしまうと、脳圧が上がってそのまま死亡してしまう可能性が高いからです。しかし、この止血はあくまでかさぶたで止めている程度なので、容易に再出血を起こします。過去のデータでは48時間以内に50%の再出血を認めたという報告もあります。その際には、出血が更に増加して患者さんの状況が悪化してしまうことが懸念されます。このために、再破裂の予防として、まず脳動脈瘤の治療を施行します。脳動脈瘤の治療の選択肢はカテーテル治療か開頭クリッピング術かどちらになります。(治療の内容は脳動脈瘤のページをご参照ください。)

当院ではクモ膜下出血の脳動脈瘤に関しては、基本的にカテーテル治療で治療しています。しかし、カテーテル治療では治療が困難であると判断した場合は、開頭クリッピング術で治療しています。

クモ膜下出血においてよく聞かれるのが、出血を摘出しなくてよいのか?という質問です。生じた出血を除去するのは決していちばん重要な点ではなく、必要性に応じて考慮することになります。むしろ、髄液コントロール(水頭症)、脳血管攣縮対策、感染症対策、脳のダメージの評価が重要になってきます。これに脳動脈瘤治療を含めて5つを動脈瘤の治療のポイントとしていつも説明させていただいています。

髄液コントロール

 脳は脳室という真ん中の空間で髄液という水のような液体が産生されて、全体を回って脳表で髄液が吸収されます。くも膜下出血が起こると、この途中で出血して水の流れが悪くなってしまい、脳室に髄液が貯留して、脳圧が上がってしまいます。このため、脳室ドレナージ、脳槽ドレナージ、腰椎ドレナージなど管を脳室の中に挿入して適宜髄液を排出することで、脳圧を管理していきます。

脳血管攣縮

 くも膜下出血後の1週間から2週間の間に脳の太い血管が細くなって血流が悪化する病態になることが知られています。血流が更に悪くなると脳梗塞を生じて、脳梗塞の部位や範囲によっては半身麻痺や意識障害、寝たきり、死亡などを引き起こす可能性があります。手術のあとから点滴などで脳血管攣縮を予防していきますが、それでもコントロール困難であった場合はカテーテルで脳の血管を拡張させることもあります。

感染症

 くも膜下出血になると挿管によるICU管理や、ベッド上での集中管理が続き、例えば今までのようにお風呂に毎日入ってご飯を食べて、歯磨きをしてのような生活とは一切異なった生活が必要となります。その経過の中で感染症が起こる可能性は少なくなく、感染症の度合いにもよりますが、ある程度コントロールをしながらの集中治療となっていきます。感染症が悪化して命の問題になることもありますので、決して油断はできません。

脳のダメージ 

 発症時の意識の状態でWFNSグレードというものが決められます。グレードは1~5まであるのですが(1が良好な状態で、5が悪い状態です)、元気になる人の割合はグレード1で7割程度ですが、グレード5では1割未満であったというデータもあります。脳のダメージはMRIなどで画像的に評価できるわけではなく、治療の経過を見ながら患者さんの状態で評価していくこととなります。

以上の問題点を全てクリアして、やっと患者さんが元気になるかどうかが決まってきます。